2014年度通常総会のご報告
terça-feira, 15 de abril de 2014

2014年度通常総会が3月27日、当研究所にて開催されました。なお、後述します所在地変更を含め定款の幾項目かを改正する必要があったため、臨時総会が最初に開かれました。その後通常総会の席上、2013年度事業報告および2014年度事業計画案が発表されましたので、ここでご紹介いたします。

2013年度事業報告書

1. 事務所移転
 当研究所が所在するビルの持ち主であるサンパウロ日本文化福祉協会(以下、文協)の要請により事務所を移転する必要が生じた。消防署の定める建築基準に合わせるため、当会事務所内に非常通路ならびに非常出口の設置を行わなければならない、ということであった。当初、文協側ではサン・ジョアキン通りに面する31、32号室の案が提示されたが、雨漏りや高温などの問題があり図書管理上望ましくないことが判明したゆえ、図書室兼会議室として使用してきた37号室に連なる36、35号室を借りられるよう要請を行った。ところが、かかる部屋に関し文協側でも史料館スペースの拡張計画を立ており、意向が重なったため交渉は難航し、文協会長と当会理事長による直接の話し合いにより、文協側の譲歩を得るに至った。引越し作業は8月から10月の間職員たちおよび協力者たちにより行われ、10月21日部屋の明渡しが完了した。なお、36号室と37号室の間の扉工事やその他の電気工事などにR$2.743,93の経費が支出された。
 引越しは完了したものの、未だ賃貸料に関する問題が残った。長年、37号室の賃貸料は免除されていたが、文協はこの機会に3つの部屋を賃貸とする旨を提示してきた。さらなる交渉が行われ、当会顧問たちによる歴史的経緯の説明などが功を奏し、最終的に当会が文協史料館と築いてきた協力関係を保ち続けることを条件とし、引き続き37号室に関して賃貸料の免除を勝ち得ることができた。

2. 日本支部
 今年度、日本支部の活動をさらに確立する動きがなされた。メンバーたちが何度も会合を持ち、今後の活動の発展性に関して討議した結果、NPOとして登録することが最良との結論に至った。そこで、10月30日に設立総会が行われ、手続きの申請がなされている。2014年3月末には認可される見込みであり、その後本部への研修生派遣の他、日伯関係やブラジル移民の調査研究などの活動が始動することになる。尚、8月3日には東京にて第一回研究会が開催され30名ほどの参加を得た。

3. 若手研究者養成のための奨学制度
 今期、2名の奨学生たちが当研究所指導教官の下、研究を行った。3月より指導が開始され、勤勉な研究活動の結果、今年2月末に最終報告書が提出された。
 2012年度の奨学生たちに関しても最終的に4人の報告書が出揃い、近く刊行される予定である。
 現在この制度はサンヨー牧場、高岡マルセーロ氏、宮坂国人財団(2口)、山本勝造財団からの支援により運営されている。

4. 研究活動
 サンパウロ大学(USP)ヒラノ・セイジ教授(文学部社会学科)指導下にある2名の学生たちの研究活動を当研究所が受け入れていたが、10月初めに報告書「O JORNAL GAKUSEI (1935-1938)」が提出された。
 また、5月より2014年3月下旬まで東洋大学社会学部紀葉子教授を客員研究員として受入れた。

5. 出版活動
 元理事である田中慎二氏による「移民画家 半田知雄 その生涯」を宮坂国人財団の援助の下、5月に刊行した。7月4日にブラジル日本移民史料館との共催にて行われた出版記念会には100名を超える参加者があった。また同作品は文協主催第43回にっけい文芸賞の日語部門において佳作を得た。

6. 古本市の開催
 当会活動資金獲得のため、6月9日古本市を文協1階14号室にて開催した。理事、職員、そしてボランティアたちが集まり午前9時より午後1時までと短い時間ではあったが、純利益で約5千レアルの売り上げと大きな成果を上げることができた。

7. 音源デジタル化プロジェクト
 1970から80年代にかけて講演や対談などを記録した音声資料が当研究所に所蔵されており、経年劣化などの問題を考えた際、デジタル化を行うことは急務であった。そこで、宮坂国人財団の援助を受け、273本のカセットテープ(159タイトル)すべてをデジタル化することができた。この作業はプロジェクトメンバーの長尾直洋氏により遂行され、2014年2月に完了した。

8. 企画・イベント
 本年度開催された各種イベントは以下の通り。

1. 研究例会
 4月 「ブラジル移民の文学史」:細川周平氏(国際日本文化研究センター教授)
 8月 「「埋もれた声」の蘇生のために-日系移民のオーラルヒストリー再生プロジェクト」:森本豊富氏(早稲田大学人間科学学術院教授)、朝日祥之氏(国立国語研究所准教授)
 11月 「在日日系ブラジル人家族の健康管理と輸入感染症(シャーガス病)の現況について」:三浦左千夫氏(日本赤十字社中央血液研究所・特別研究員)

2. コロニア今昔物語
 1月 「人間生活空間としての移民船」:根川幸男氏(ブラジリア大学准教授)
 5月 「ブラジル音楽とその道の日系パイオニア」:坂尾英矩氏(ブラジル音楽評論家)
 10月 「カザロン・デ・シャーの復元と保存活動」:中谷哲昇氏(陶芸家)
 12月 「日伯農業協力の歴史-大豆を中心として」:山中イジドーロ氏(農業技師)

3. 勉強会
 1月 「アンドウ・ゼンパチとマカコ事件」:古杉征己氏(当会理事)
 2月 「ブラジル地方選挙2012:サンパウロ市長選挙からブラジル政治のこれからを読む」:舛方周一郎氏(上智大・USP大学院)
 3月 「ブラジル日本語教育の現状とその展望」:丹羽義和氏(日本語センター事務局長 当会監査役)
 5月 「コミュニティ・ポリシングの現状」:清水麻友美氏(東大大学院、USP在籍中)
 6月 「三重県四日市市の日系ブラジル人集住地域における住民調査 ― 日本における多文化状況に関する一考察」:長尾直洋氏(USP LEER 客員研究員)
 7月 「虫と民俗」:井上理恵氏(神奈川大学大学院修士課程)
 8月 「日伯法制度比較及びその背景についての考察」:田中研也氏(弁護士)
 10月 「幕末と「近世史略」における西洋文明様式(ポ語)」:ウィリアン・アントニオ・ヴィエイラ氏(当会奨学生)
 12月 「もはやひと言では語れない それぞれの日系コミュニティの今 -伝統維持と文化変容と社会の融合―」細川多美子氏(当会理事)

9. 資・史料の分類・整理
 引越しに伴い、資料の大幅な整理を行うこととなった。今まで日本語資料とその他言語の資料とが別々の部屋に置かれていたが、それを統合し37号室が図書専用室として機能するようになった。今後のさらなる整理作業により図書利用性の大きな向上が期待できるであろう。

2014年度事業計画書

1. 創立50周年記念事業
 来年当研究所は創立50年を迎えるが、この節目となる機会に記念事業を行う計画がなされている。具体的な案として
  ・ ブラジル日系文化協会調査
  ・ 人文研50年史編纂
がある。

2. OSCIP認定への手続き
 当会の活動基盤強化のため、寄付者に対して免税の恩典があるOSCIP(公益民間団体)の認定を取得するメリットが提唱されてきた。そこで、今年度を通して申請手続きへの準備を進めていく。

3. 若手研究者養成のための奨学生制度の継続
 今期は以下の2名が奨学生として選考された。

  バルバラ・アパレシーダ・アルベス・フェヘイラ・デ・カルバーリョ・ピナ(USP歴史科)
  “Relação entre Portugal e Japão nos séculos XVI e XVII e o impacto gerado na cultura e sociedade japonesa”(「16,17世紀における日葡関係史」)

  ペドロ・シュライバー・モッタ・マルチンス・デ・バッホス(USP哲学科)
  (“もののあはれ”について、タイトル未定)

4. 日本支部の活動
 NPOとして新たな出発をし、研究会の開催、また本部への研究者派遣などの活動を始める。

5. 客員研究員・研究生の受入れ
 随時、外部よりの研究者を受入れ、研究活動の支援を行なっていく。現時点において根川幸男氏を客員研究員としてお迎えすることが決定している。

6. 出版事業
 本年度、出版が計画されているものは次の通り。
  ・ 第2期および第3期奨学生期末論文集

7. 資・史料収集と整理
 継続的に行われている資料整理に加え、非日本語図書の整理に本年度は力を入れ、また雑誌の分類整理にも着手するものとする。

8. 企画・イベント
 本年度も当所主催による下記の発表会を随時実施する。

 1) 研究例会
  研究者によるアカデミックな研究や調査の成果を一般に発表する趣旨による。本年第一回が2月18日に開催された。(前山隆氏「昭和新聞と川畑三郎―“勝ち組の頭脳”に目された人物」)

 2) 今昔物語
  従来あまり採りあげてこなかった分野における移民の営為を発掘して発表するもの。

 3) 勉強会
  若手研究生の研究テーマを中心に非公開で討論を行う趣旨による。本年既に開かれたものは以下のとおり。
  第1回 佐竹プリシーラ氏 ”Tradição e Modernidade: O Kimono e a identidade japonesa no contexto da imigração japonesa no Brasil” (ブラジル日本移民に見る着物と日本のアイデンティティ:伝統と今) 1月28日
  第2回 山本晃輔氏「教育・コミュニティ研究と日本移民に関して」 2月25日
  第3回 名村優子氏「戦前期アリアンサ移住地経営の理想と現実」 3月25日

9. 公式ウェブサイト
 本年度、新たに追加予定のコンテンツは以下のとおり。
  ・ 「ブラジルに於ける日系人口調査報告書 -1987・1988-」全体の公開
  ・ 年表(1995年まで)検索システム

理事会 任期2年(14年4月より16年3月まで)
 顧問        脇坂勝則 宮尾進 鈴木正威(新)
 理事長       本山省三 
 副理事長     菊地保夫
 第一常任理事  大原 毅
 第二常任理事  細川多美子
 第一会計理事  天野一郎 (新) 
 第二会計理事  高山儀子
 理事(順不同)  押切フラヴィオ
 理事        栗原猛
 理事        小林真登
 理事        古杉征己
 理事        松村照明

 監査役 任期1年(14年4月より15年3月まで)
 (正)久保ルシオ 森脇礼之 丹羽義和
 (副)奥山啓次 (臨時総会により副監査役一名に改定) 


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros