人文研に入って
古杉征己(サンパウロ人文科学研究所)
terça-feira, 15 de janeiro de 2008

 情けなくて、歯軋りする瞬間がある。日系コロニアに関する、外部からの問い合わせに対し、当研究所が満足に回答できないときだ。

 殊に、現在の日系人口についてはお手上げ。「データがありません」といって、引き揚げてもらうしかない。「推定で、全国に140万人」というのが精一杯のところだ。実は、この質問がもっとも多い。

 人文研は創立約40年(前々身の「土曜会」から数えると60年)。(1)ブラジルの日本移民史(2)ブラジルの日系人に関する調査・研究を目的にしている。数々の実績も、残してきた。

 コロニアの“知恵袋”としての役割を担ってきたともいえる。多方面から、助言を求められる所以だ。

 一方で、高齢化などによるコロニアの“地盤沈下”の影響を、大きく受けているのも事実だ。所長も研究員も不在。移民100周年を記念した「人文研研究叢書」の刊行が続いているとはいえ、調査・研究なんてできる体制ではない。

 滅びゆく日系団体をランク付けしたら、間違いなく人文研が上位に位置するだろう。

 自己革新を──。そんな期待を背負って、計画されたのがサイト開設だ。文字通りゼロからのスタートだった。理事やJICAのシニア・青年ボランティアなど、若手が中心になって試行錯誤を重ねた。

 刊行書のPR、移民史研究の最前線からの寄稿文、移民史年表……。研究者だけに間口を狭めるのでなく、一般の人も楽しめるように知恵を絞ったつもりだ。

 新しい企画もどんどん盛り込んでいきたいし、サイト上で議論を戦わせるようなものがあっても面白い。「閲覧者の中から、研究員志望者が現れてくれば」
と期待も膨らむ。

 1年半後は、移民100周年。日系コロニアがクローズ・アップされてくるはず。それを強く実感する。マスコミや研究者などからの問い合わせは、ますます熱を帯びていくのではないか。

 ネットの世界は、サイトが存在していれば結構という時代から、内容はもとよりデザインやレイアウトについて、洗練されたものを求められるような時代になった。人文研のサイトが、どこまで食い込んでいけるのか。

 組織の活性化をかけた仕事は、始まったばかりだ。(己)


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros