第一回「人文研を考える」シンポジウム開催報告
quinta-feira, 22 de setembro de 2011

8月18日、文協ビル1階小会議室において、第一回「人文研を考える」シンポジウムが開催されました。このシンポジウムは、当研究所本山理事長の提唱により企画されたもので、今岐路に立つ人文研の将来を考えるにあたり、外部から知識者をお招きし意見を拝聴することを目的としています。

初回である今回は日本語話者よりパネリストを3名お招きいたしました。ブラジル日本都道府県人会連合会(県連)会長園田昭憲氏、通訳・翻訳家久保ルシオ氏、そして伯国三菱重工業社長西岡信之氏です。



シンポジウムの始めに本山理事長より開会の挨拶がなされ、現在人文研が直面している状況また課題について話されました。これから人文研が何をなすべきなのか、アマチュアの研究所のままでこれからの時代を生き残っていけるのか、などの問題提起がなされました。そして、人文研の将来はこのシンポジウムにかかっている、という認識を示しました。

最初のパネリスト園田氏は、まず県連会長として蓄えてきたノウハウや経験を紹介されました。その後、人文研への提案としてもっと団体としての顔が見えるようにすること、またプロとしての意識を強めることなどを挙げられました。会というものは、拡張するものではなく、縮小して、小粒でもピリリと辛い、そういうものであるべきという考えにのった発言でした。

園田氏原稿ダウンロード

2番目のパネリストは二世でバイリンガルの久保ルシオ氏。氏はこのシンポジウムに先立ち、“ミニ調査”を実施されたことを明かされました。久保氏は人文研がこれからも存在していく意義があるかどうかに関し、多くの人が疑問を持つのではないかと予想していたようですが、この調査の結果として、調査対象のほぼ全員、人文研を知らなかった人までもがその重要性に疑問を差し挟まなかったということを驚きを持って語られました。しかし、現在の人文研においてだれが主体となっており、だれのためにあるのか、はっきりしなくなっていると指摘されます。そして、現在の日系社会に関しても情報を発信し続けて行くことができるように幾つかの提案をされ、特にインターネットの有効活用が鍵になると強調されました。

久保氏原稿ダウンロード

最後のパネリスト西岡氏は、まず日本側から見たブラジルおよびその日系社会の位置づけをなされました。日本からブラジルへの企業進出が増えている昨今、日系人社会の果たす役割が重要になっている、と語られます。そこで、日系人が自分たちのアイデンティティーを求める上で、人文研が果たすであろう役割の重要性を暗示され、一方で人文研が存在していく上での理念が明確にされていない、との観察を述べられます。そこでまず、理念を決めてそれをベースに現在の活動を見直すことが必要なのではないか、との提言をされました。

西岡氏原稿ダウンロード

その後、研究所の執行部より辻監査役、古杉、古庄両理事が所感を述べ、いずれも安定した財源確保の必要性や広報活動の不足などに関しての認識を示しました。

一般参加者からも、研究と経営を分けるべきであるとか、研究のハードルをもっと下げたほうがよい、などの意見が寄せられました。



最後に本山理事長より閉会の辞がなされ、その中で財団法人を設立する構想が明かされました。また、財源の問題が重要であることを認めつつ、今まで人文研が献身的な人たちによって支えられてきたことにも触れ、そういう人たちを見つけ出すことが自分の役割ではないか、と述べました。そして、今後の研究所を発展させるためにみなの協力を求め、今回のシンポジウムが閉じられました。

なお、このシンポジウムは3回計画されており、第二回はポルトガル語話者のパネリストをお招きして開催される予定になっております。開催日時等につきましては当サイトなどよりご案内させていただきます。


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros