研究例会のお知らせ:「アルゼンチン一世の文学活動―増山朗の『グアラニーの森の物語』を中心に」
terça-feira, 24 de junho de 2014

 アルゼンチンには20世紀初頭から日本移民が記録されています。国家間の事業として始まったのではないため、ブラジルの「笠戸丸」にあたる記念碑はありません。ですが、ブラジルからの再移住者を含む自由移民が主にブエノスアイレス近郊に共同体を作り、1910年代には日本語新聞が存在しました。移民の流れは戦争で中断され、戦後は呼び寄せを中心に細々と続くに留まりました。

 今回この例会で紹介される増山朗(1919年北海道~2006年ブエノスアイレス)は1989年に首都で結成された文芸サークル「巴茶媽媽(パチャママ)」(ア イマラ語で母なる大地の意)の中心人物で、『グアラニーの森の物語』は同誌に連載されましたが、廃刊のために中断された作品で、アルゼンチンで書かれた唯一の長編日本語小説です。物語は前半は日本から海外移住地を求めてやってきた実在のあっせん者田中誠之助が、イグアスの滝に近いミシオネス州に日本人受け入れの地を見つける物語、後半はそこに入植した実在する帰山徳治一家の日本出発からブエノスアイレスの最底辺生活、奥地開拓・定住までの物語と二分されています。実話の形を借りながら、作者の移民観、開拓観が色濃く描かれています。発表ではこの小説を読みながら、ブラジル移民の小説と比較がなされます。

研究例会
アルゼンチン一世の文学活動―増山朗の『グアラニーの森の物語』を中心に

講師 細川 周平氏 (国際日本文化研究センター教授)

日時 2014年7月10日(木)18時半より

場所 ブラジル日本文化福祉協会   1階 13号会議室


サンパウロ人文科学研究所 Centro de Estudos Nipo-Brasileiros